何日も降り続いた雨が止んだ或る日。
谷川にかかる橋は、雨と渓流に痛めつけられて丸太が一本残っているだけでした。
橋桁は今にも倒れそうです。其処へ狐に追いかけられた兎が走って来ました。
兎は、丸太を渡りきってから落とせば逃げられると思いました。
狐は、丸太を渡らせなければ捕まえられると思いました。
狐がどんどんと丸太を踏み鳴らすと、土手の石が崩れ落ちました。
そして、丸太橋は真ん中の橋桁に支えられた、大きなシーソーになってしまったのです。
狐が兎を捕まえようとすると、丸太橋は河に落ちてしまいます。
下は増水した激流、落ちたら助かりません。
狐と兎は、丸太橋の両端にしがみ付いたまま、顔を見合わせていました。
いつしか、二匹は静かな声で話し始めたのです・・・。
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