昔、南の国では、山のどこかに大きな竜が隠れていると言われていました。 人々はその竜を恐れて、子供をしつける時、
『そら、りゅうがいたずらっこ子や悪い子をねらっている』
と言って脅かすのでした。
だから、子供たちはみんな竜を恐れるようになったのです。
ところが、一人だけ竜に話を恐れない子供がいました。
ある晩、その子供は竜を可哀想だと言いました。
誰も竜を可愛がってくれないので、可哀想だというのです。
子供のお母さんは、そのことを不思議に思いました。
その不思議な子供の誕生日が近づきました。
誕生日のお祝いに誰を呼ぼうかとお母さんが訊くと、その子は
『山の竜を呼んでよ』と言います。
お母さんはふざけていると思い、怒り出しました。
でも、その子供は本気だったのです。
一人で山へ向かい、竜を呼びに出掛けました。
そして、竜の出てきそうな谷に向かって呼びかけました。
竜は、その呼び声を聞いて不思議に思いました。
まさか、人間が竜に呼びかけるとは思ってもみなかったのです・・・。
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